蝉フィクション

宝くじ1億円当てた男、砂吹(偽名)。彼に誘われた見ず知らずの4人の共同生活 in London. リアルタイム小説&ガイドブックの折衷案。

第46話「10年前のフィルムは現像できるのか - 洒落たタイムカプセル」

 

時帰国。いざ帰るとなると、やり
たいことも結構ある。実家に顔を出し
て、僕はむかし使っていたフィルムカ
メラを押し入れから引っぱり出した。

 

 

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カメラマン、33歳、イギリス12ヶ月目

 

 

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珍しく朝食で4人全員が揃った。

 

「日本に帰りたい人」と砂吹が突然手をあげて、挙手を求めるようにした。

 

「紅茶飲む人いる?」くらいの軽いノリではあったが、思わず手をあげたのは、ミムラ以外の3人だった。

 

ヘアメイクとして活動しているミムラは、今は撮影に少しでも顔を出したいから、という理由で、女の子一人だが残ることになった。

 

 

 

 

旅費は全部出すから、滞在費と向こうでの金は各自で工面してくれ、と砂吹が言った。

 

7日間の日本滞在。

 

長い冬をやっと終えて、本当はロンドンにいるべき時なんだろうけど。

 

その貴重な季節を捨ててまで、という思いが、日本での時間も有効に使えるかもしれない。

 

 

 

 

遠いと思っていた、日本とイギリス。

 

思い立ってから2日後には、僕らは成田に着いていた。

 

到着した日は実家に顔を出そうと思っていた。

 

家に着いたのは土曜日。家には父だけがいた。

 

 

 

 

さっそく自分の部屋の押し入れに頭を入れ、F3を引っぱり出す。

 

遠い昔、空の写真家HABUさんに影響されて買ったフィルムカメラ

 

HABUさんの個展に行って、たまたま在廊していた彼に会って。

NIKON F3を使っていると聞いて、中古で手に入れたのが、たしか20歳の時。

 

あの時は、露出もISOも知らなかった。

 

 

 

 

見つけ出したF3には、あろうことか、なんとフィルムが中に入ったままだった。

 

もう10年以上前のフィルムだ。

 

父が新聞を読んでいたので、僕はイギリスで買って来た紅茶を淹れる。

 

「10年前のフィルムが出てきたんだけど、現像できると思う?」

父はこっちを見ずに、無理じゃないの、と言った。

 

 

 

 

こういう時の父の言葉はいつも根拠がない。

 

ただ、だいたいは合ってることが多い。

 

ネットで調べると、カラーフィルムはだいたい2年くらいが使用期限だと書いてある。

 

そして、中に入っていると思しきSolarisというフィルムは、2013年に生産終了になっていたこともわかった。

 

 

 

 

父の話が根拠のないのないものだと分かっていても

 

僕は自分の都合で、聞き入れてしまう時がよくあった。

 

たとえば、フィルムの現像が面倒だな、と感じている今も、

 

どうせ写ってないのなら、お金も時間もかけるだけ無駄だな、と考えている。

 

 

 

 

取り出したフィルムを、一度はゴミ箱に入れた。

 

しかし、パソコン上のデータをゴミ箱に移すのとは、まったく違った重みがそこにはたしかにあって、

 

しばしの睨めっこの後、僕の手はそのフィルムを拾っていた。

 

何を撮ったかも覚えていないフィルムなんて、素敵じゃないか。

そんな思い直りの良さよ。生産終了しているフィルム、というのも貴重に思えてくる。

 

 

 

 

その日のうちに現像に出しに行ったので

イギリスに戻る前に無事に受け取ることができた。

撮った覚えのあるような、ないような。

不思議な感覚だった。

 

 

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破天荒な構図。

しかしこの時計は今も持っている。

たしかに僕の撮ったものだ。

 

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漂う昭和感。

 

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誰。

 

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やっぱり空の写真が多かった。

 

粒子が荒いのは、フィルムの劣化というより、ISO800を日中ガンガン撮っていたせいな気がする。

 

 

 

 

機材何使ってるんですか? とカメラマンに訊くと

 

みんな揃って、どんな写真が撮りたいの、と言う。

 

撮れた写真が好きか嫌いかは分かるけど

 

どんな写真を撮りたいか、と言われるとずっと分からなかった。

 

 

 

 

フィルム。

フィルム風に加工できるデジタル。

ゼロから写真を作れる。

いっそCGでいいじゃないか。

 

 

 

 

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写真が何だか分からなくて社カメをやめて。

イギリスに行って、とりあえず分かったことがある。

 

そこにどんなストーリーがあるのか。

それが今は、どんな写真を撮りたいかに繋がっている。

 

気がするたぶん。 

 

 

 

 

 

 

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