蝉フィクション

宝くじ1億円当てた男、砂吹(偽名)。彼に誘われた見ず知らずの4人の共同生活 in London. リアルタイム小説&ガイドブックの折衷案。

第36話「他人に興味がないと勘違いしていたすべての人へ」

 

奇心がない。他人に興味が持てな
い。それを公言すること程バカな事は
ない。引きこもりで見た目も冴えない
先輩はそう言った。一応、耳を傾ける。

 

 

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 ヘアメイク、28歳、イギリス4ヶ月目

 

 


 

 

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 「人に興味は持ちたいんです。でも、そう思っている時点で、その興味って偽物で」

 

好奇心とかって、泉のように生まれつき湧いてくるものだと思うんですよ、と私は普段から思っていることを口にする。

 

「安心したまえ。基本的に、人に興味がある人なんていない。みんな、興味のあるフリをしているだけだ」

 

髪がボサボサで、髭が生え放題のワーホリ先輩は、残りのビールを空けてそう言い切った。

 

 

 

 

先輩はつらつらと説明を始める。

 

「君が他人に興味がないと思ってる原因は、ただ単に、雑談が苦手なだけだ。

 

知識がないために、その人の話が理解できなかったり、新たな質問を思いつかない。極論を言えば、異国の言葉を知らない君が、異国の人の話を聞いて、面白いわけがない。

 

では、知識とは何か。

 

 

 

 

例えば、日本の地理を知ってるのと知らないのだけで全然ちがう。

 

初対面の人間に「出身、どこですか」と訊いておいて、相手が徳島だと答えるとする。

徳島ってどこだっけ、何が有名だっけ、となったら会話は終わる。

 

香川出身です、と言われる。

あ、知ってると思って「うどん県ですね」なんてのは浅はか過ぎる。

 

その人は生きてきた中で、何千回とそのやりとりをしてきたに違いない。

 

 

 

 

そこで、知識がものをいう。

 

うどん県なんて言われていますが、疑ってたんですよ。本当に美味しいのかって。たかがうどんだろ、って。東京にだって美味しいうどん屋はたくさんあるし、それこそ香川からきた讃岐うどんのチェーン店だってありますよ。

 

いや、しかしね、この前新聞に載ってたおすすめの店ってのがあって、たまたま出張の時に立ち寄ったんですよ。「うどんバカ一代」という店。いやあ、はじめての食感でしたね。今僕が十代だったら、うっかり弟子入り志願していたと思います。

 

あ、ご存知ですか。やはり有名なお店なんですね。ちょっとここを越えるうどん屋さんあったらぜひ教えてくださいよー。

 

 

 

 

どうです、この人。無駄話をしてるだけなんですけど、香川出身の相手に興味がありそうじゃないですか。

 

そう、他人に興味がないと思ってる人のほとんどは、無駄話が苦手なんですよ。知識がないばかりに。

 

更に言えば、知識がないことを知られたくないと思っている。知らないことがあることが、恥ずかしいことだと思っている。

 

無駄話が得意な人は、知らないことや、反対意見を恐れない。

 

 

 

 

会話において、聞くことが大事なんてよく言われますけどね、

そんなの状況によりますよ。

 

プロの野球選手と小学生チームでも、キャッチボールが成り立つのは何でだと思います。

 

プロが手加減してあげるからです。取りやすいところに投げてあげるからです。ちょっと反れたボールでも、手を伸ばして取ってあげられるからです。

 

相手が小学生だとしても、少しできる子だと分かったら、フライを投げたり、速い球を投げてあげる。レベルが少し上がって、お互いおもしろくなる。

 

 

 

 

会話もこれと同じなんですよ。

 

いきなりコアな漫画やプラモデルの話をしないですよね。

 

でも、たとえ自分が興味のない分野でも、少しの知識があると、話題が尽きずに次々と質問が出てくる。

 

次第に共通点が出てきて、深い話になり、盛り上がる。

 

 

 

 

話したい人の話は聞いてあげる。

 

話すのが不得意な人とは、自分から話をして、共通の話題を探りに行く。

 

ただ意見を求められている時は、どんどん提供してあげる。

 

会話の上手な人は、そこら辺を使い分けてるんですよ。

 

 

 

 

居心地が悪いからといって職場を転々とできるのは、大人だからだ。

友達を選べるのも、大人だからだ。

子どもは、嫌な友達がいるからといってクラスを変えることはできない。

 

他人に興味がないんです、と公言する人。

 

結婚に関心がないと強がり、開き直る人。

 

いいですよ、みんなの人生だから。

ただ、もったいないですよ」

 

 

  

 

いきなり結婚の話を持ち出されてひやっとする。

別に私は、結婚を諦めているわけではない。

 

 

 

 

「知識が1の人と0の人の差はたった1だと思いがちですけど、実はちがうんですよ。

 

知識1の人はその知識を誇りに思い、更に探求するが、0はただ0であることを隠そうとする。

 

そこに、好奇心が生まれるかどうかの差がある。

 

知識1の人は10の人の前でも、自分が1であることが恥ずかしくない。

知らない9を吸収したいと思う。

しかし知識0の人は、たとえ1の人の前でも自分が0であることが恥ずかしく思う。

 

 

 

 

好奇心って、人の内面から勝手に湧いてくるものじゃないんですよ。

 

最初の一歩は、みんな嘘ついて手に入れるんです。

 

別にそれほど興味なんてないんですよ、みんな。たかが暇つぶしの、世間話ですよ。

 

知識1を増やして行く作業の、その最初の1は、嘘ついて手に入れるんです。

 

 

 

 

興味や好奇心、知識はいつだって芋づる式だから、

 

1あれば、次から次へと興味が湧いて、人と話すのが楽しくなる。

 

話せる分野も広がる」

 

 

 

 

私は、圧倒された。

 

たしかにそうかもしれない、と思ったが口から出たのは意外な言葉だった。

 

「なんか、いまいち、説得力にかける……」

 

ああ、場の空気が悪くなるな、他人事のように思った瞬間、砂吹が手を叩いて愉快そうに笑った。

 

 

 

 

「そうなんだよ!実は今日ミムラを呼んだのは他でもない。先輩にも、知識が0なものがある。さあ、言ってやれ!なぜ説得力にかけるんだ。先輩が持っていないのは何だ」

 

「美意識……」

 

そう、この人は外見を気にしていない。もちろん外見がすべてではないが、最低限のマナーはある。髪を切って髭を剃って、スタイリングすれば、もっともっと良くなる気がした。

 

「よし!本当に興味とは芋づる式かどうか、証明しよう!一度、先輩をかっこよくするんだ!大変身企画だよ!」

 

 

 

 

砂吹は目を輝かせて言った。

 

これは私のための集まりじゃなかたったのかと思ったが、この強制イベントは週末に私達のシェアフラットのキッチンでやることに決定した。

 

Before写真を撮っておけ、と言うので、私は先輩の写真を撮る。

 

 

 

 

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これがワーホリ先輩。意外と若そうだ。

今週末、私は髪を切ってスタイリングし、服も買いに行く。

そして、カメラマンの広末さんに写真を撮ってもらうことになった。

 

 次回、大変身企画。

 

 

 

 

 

 

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