蝉フィクション

宝くじ1億円当てた男、砂吹(偽名)。彼に誘われた見ず知らずの4人の共同生活 in London. リアルタイム小説&ガイドブックの折衷案。

第25話「目覚めるとベッドに金髪美女が。そして携帯を盗まれる」

 

の世には、不可抗力という言葉が
ある。未然に防げる犯罪と、防げない
犯罪がある。次にまた金髪美女がベッ
にいた場合一体どうしたらいいのか。

  

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宝くじが当たった無職、20歳、イギリス6ヶ月目

 

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今回は続き物なので、こちらから読むことをおすすめします。  

olm-h.hateblo.jp

 

 

 

 

男女混合、二段ベッドのドミトリー。

 

そこに、男が期待するような甘い妄想は皆無だ。

 

アジアを旅した経験から言えばそうだった。

 

同じ部屋の人と会えば話したりはするが、それ以上も以下もない。連絡先を交換しても、以後連絡を取ることはめったにない。

 

 

 

 

そのはずが、この美女大国ラトビアで、事件は起きた。

 

朝、薄いカーテンの隙間から光が差し込み、長い髪が頬をくすぐる。

 

うっすら目を開けると、金髪の美女の小さな顔が、覆い被さるような近さで、そこにある。

 

パニックを起こさないように、おれは飽くまで冷静に訊ねる。「なに、してんの?」

 

 

 

 

彼女は眠たそうな目をこすりながら言った。

 

「間違えました」

 

 

 

 

間違えた、とは?

 

 

 

 

中学校の頃、休み時間にサッカーをしていた時のことだ。

 

よく相手チームにパスミスをする、クラスの変わり者がいた。

 

彼は、勉強はできたが体育は苦手だった。

 

その彼はミスをするたびに「間違えた」と言っていた。

 

 

 

 

周りの味方は、「おいよく見てパスをしろ」だとか「焦らなくていい」とアドバイスをした。しかし彼は、相手チームによくパスをしては、謝るわけでもなく「間違えた」と言っていた。

 

これは、自分の技術がないからパスを失敗しているわけではなく、飽くまで相手を味方チームだと勘違いしてパスをしてしまったのだ、という主張なのか?

 

友達と顔を付き合わせ、そのことについて真面目に議論したこともあった。

 

だが結局、頭の良い奴の思考は分からない、という頭の良くない答えに辿り着いた。

 

 

 

 

中学の時の記憶まで瞬時にトリップしたのは、寝ぼけていたからであろう。

 

そんなお門違いな「間違えた」であったのだが、「なんだあ、間違えちゃったのかあ」とおれはまた瞼を閉じた。

 

彼女はタンクトップに下着姿で、これが夢ではなく、現実だったらいいのにと願った。

 

目覚めると、それは現実だった。枕元で充電していたはずの携帯電話がなくなっていた。

 

 

 

 

「あんたバカ? 男がガーガー寝ているベッドと自分のベッドをどうやったら間違えられるのよ」

 

三井のキンキンした声が、二日酔いの頭に響く。

 

「顔は、覚えてないんですか」広末くんの問いに、記憶を辿る。

 

「下はパンツしか履いてなかった」

 

顔だって言ってんでしょ、と三井が憤る。

 

 

 

 

顔は覚えていない。

 

欧米人が、日本人と韓国人を見分けられないように、おれ達もまた欧米人の顔は一瞬で判別がつかない。金髪美女は、それでひとくくりだ。

 

「覚えてたとしても、もうこの宿にはいない可能性が高いですよ」

 

「今、私たちにできることと言えば……」

 

 

 

 

三井と広末が顔を見合わせ「iPhone を探す!」と言った。

 

そんなこと分かってるんだよ、と思ったが、彼らが言ったのは、iPhoneを追跡する機能のことらしかった。

 

 

 

 

三井の携帯から、自分のiCloudにログインする。

 

すると地図が現れ、携帯の現在地が現れた。

 

まだこのドミトリーの近く。リガ市内で、徒歩圏内だ。

 

「おい野郎ども、40秒で支度しな」威勢良く号令をかけたが 「パジャマなのはあんただけ」と三井がおれのジーンズを投げつけた。

 

 

 

 

小走りで市内に向かう。およそ10分くらいだろうか。ラトビアはまだ初日で土地勘がない。今いる場所がどの辺りなのか、見当もつかない。

 

「初めてですね、こんなタイプの観光は」

 

「スリルがあっていいだろ」おれは軽口を叩く。

 

「見つけたところで、何て言って返してもらうのよ」三井はいつでも現実的だ。

 

 

 

 

「This is mine!! This is mine!! You are beautiful!! 」

 

そう叫ぶと、三井がこらえきれず噴き出し「本当バカ」と困り顔で笑う。

 

 

 

 

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短いトンネルを抜けると、狭い路地へと続いていた。

 

人気が途端に少なくなる。昼間だというのに暗い。

 

換気扇や排気口が並んでいるのか、空気が悪い。

 

「ちょっと止まって」三井が声をひそめた。

 

 

 

 

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「地図によると、そこの角を曲がったあたりを示してる。いる?」

 

滑稽だとは思ったが、おれはハリウッド俳優が敵を確認する時にするように、通りの角からゆっくりと片目だけ出して様子を伺う。

 

「間違いない、彼女だ。一人だ」

 

「何やってるんですかね、こんな薄暗い所で」

 

「さあ。誰かを、待ってる、とか?」

 

 

 

 

広末くんも金髪美女を確認して、冷静に状況を考える。

 

「なんか、普通の子ですね、服装も。そもそも、携帯を盗難したら普通、中のsimを抜き取って、電源を抜くのが常套手段です。iPhone を探すで追跡されないようにね。電源が入ったままだから、僕らはここまでやって来ることができた。だからきっと、常習犯ではないと思います」

 

「まるで君が常習犯のようだよ広末くん」その呼びかけに答えないところが恐い。

 

「でも、こっちは3人、向こうは1人。とりあえず出て行って、強く返してと言えば、返してくれるんじゃない? 物騒な武器を持っているとも思えないし」

 

 

 

 

「ダメだ、一足遅かった」おれはタイミングを逃したことにちっと舌を鳴らした。

 

「とても物騒な武器を持っていそうな感じの男が2人、現れた」

 

「どういうことよ」

 

「一人か二人は殺していそうな」

 

 

 

 

「あのね、黒人だからってそういう偏見は」と言って三井が初めて顔を出し、「あれは、ヤバい」と言った。

 

「同じ人数になっちゃいましたね」

 

「バカな、同じなもんか。黒人1人あたり、おれ17人くらいの戦闘力だ」

 

 

 

 

「どうしましょう、隊長」三井が珍しくおどけてみせる。余裕がない証拠かもしれない。

 

そこに、あるひとつの考えが閃いた。

 

 

 

「おい、広末くん。これはチャンスだぞ」

 

何の? という顔を向けてくる。

 

「今こそ、復讐の時だ。昨日言ってたじゃないか。恥ずかしい思いをしたんだろ」

 

 

 

 

次回、第26話。無謀な作戦に挑む。

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