蝉フィクション

宝くじ1億円当てた男、砂吹(偽名)。彼に誘われた見ず知らずの4人の共同生活 in London. リアルタイム小説&ガイドブックの折衷案。

第20話「リトアニアの美女と絶景まとめ バルト三国の光と闇 光編」

  

気って大事。晴れているかどうかで変
わるんだ。その国を好きになれるか。
スピ
ード違反を見逃してもらえるか。告白がう
まくいくか。いや、それは言い過ぎかな。

 

 

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作家志望、24歳、イギリス5ヶ月目

 

 

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晴れた。

 

空が青いだけで、街がこうもちがって見えるとは。

 

気温も上がり、昨日はどこに隠れていたんだろうという数の人々が、旧市街を歩いていた。

 

広末くんが、撮った写真に (C) コピーライト表記 というのを試験的に入れてみるらしい。著作権保護を目的とするものらしいが、写真の雰囲気も壊れる可能性があるので、飽くまで検討中とのことだ。

 

 

 

 

「太陽って、いいな」 砂吹が感慨深げに言う。

 

日本ではあまり感じなかったが、ロンドンで生活をしていると有り難みが身に染みる。

 

「海外の人は、晴れてると仕事早く切り上げてカフェやパブのテラスで太陽を浴びるっていうの、気持ち分かるよね」

 

 

 

 

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「教会がありますよ、入ってみましょう」広末くんが先頭をきった。

 

開けて良いのか躊躇われるほど、重厚なドアを押して中に入る。

 

 

 

 

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人の気配はない。

 

誰の合図があったわけではないけれど、私たちは勝手に中へ進み、ベンチにそれぞれ一人ずつ座る。

 

天井が高い。厳か(おごそか)だ、という感情が沸く。普通に生活していたら味わえない感情の類いだ。

 

 

 

 

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教会を出て街を歩くと、観光客のような人々も見受けられた。

 

昨日は皆無だった、活気というものが、今日はある。

 

 

 

 

 

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「ねえ、見て見て! フォトジェニックな壁」

 

私がはしゃぐと、わざわざ日本で流行っている言葉を使うな、と砂吹が嗜める。

 

 無視して、壁の前で広末くんに写真を撮ってもらう。

 

「広末くん、こんな幼稚園児のような女より、リトアニアの美女を探しに行こう。その方がよっぽどフォトジェニックだと思わないかい」

 

 

 

 

広末くんは、砂吹の従順な家臣のように、道すがら見つけた女性に話しかけ、どんどん写真を撮ってゆく。

 

 

 

 

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男の写真はいらーん、と砂吹がごねている。

 

どっちが幼稚園児なのか。

 

そして、あれだけ美女美女と言っていたくせに、いざ広末くんが写真を撮っている時には、一切話しかけたりしていないのだ。

 

私の一歩後ろ辺りで見守っている姿は、情けない。

 

 

 

 

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日時計になっている。

 

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「おもしろい。晴れ、曇り、雨の空が一度に見える」

 

天気が変わりやすいということは、風が強くて雲が早く流れるからなんだろうな、という当たり前のことに気付かされる。そんな空だった。

 

「ねえ、晴れてるうちに、あの上にのぼってみようよ」

 

私はそう言って指をさす。

 

 

 

 

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ところが、あの高台に続く道は鎖で封鎖されていた。

 

どうやら今は工事中で、のぼることができないようになっているみたいだ。

 

「わあ、残念だね」

 

私が肩を落とすと、「簡単に諦めんな、要は高いところに上れればどこでもいいんだろ」と砂吹が言った。

 

 

 

 

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「ちょっと、この階段、手作り感が半端ないけど、大丈夫?」

 

「ところどころ段ないし、傾いてますね。そして誰ものぼっていない」

 

「おまえらは、観光客が多ければ多いで文句を言うくせに、誰もいなきゃいないで心配とは、どういうワガママ民族だ。これが要するに穴場ということなんだろ」

 

そう言いながら砂吹がどんどん一人で先を歩いていく。後を追う私と広末くんは、この先に何かあるのかは懐疑的だ。

 

 

 

 

「なんか、日本昔ばなしに出てきそうな階段。このまま天国に行ってしまいそう」

私は広末くんに言う。息がだんだん切れてきた。

 

「懐かしいですね。僕も好きでよく見てたなあ。ああいうアニメ、今ないですよね。書いてくださいよ、現代版昔ばなし」

 

「最近、またショートショート書けてないもんね。どんなのがいいだろ」

 

「日本昔ばなしやイソップ物語みたいに、現実世界からは逸脱しているのに、最後は教訓になる、みたいなやつがいいです」

 

 

 

 

たしかにそんなのが作家として書けたら素敵だとは思うが。

 

でも、イギリスとはちがった外国の雰囲気に感化されて、今なら何か書けそうな気もする。

 

頂上では、何か誇らしげな様子の砂吹が、「早く来い」と言っている。

 

「急げ。外国の天気は、女心とあき竹城」とわけの分からないことを言っている。

 

 

 

 

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のぼってきた甲斐があったろ、と砂吹は手柄を立てた子どものように目を輝かせている。

 

広末くんは、興奮気味にシャッターを押しているのかと思いきや、カメラを下ろし、感慨深げに景色を見ている。そして、私の視線に気が付いたようだ。

 

「大丈夫、そんな顔しなくても。ちゃんと後で撮りますよ。でも、まずはこの目で、しっかり見ておかないと」

 

「全然、そんなつもりじゃ」私は慌てて否定する。

 

 

 

 

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10分後。

空が急激に暗くなり始めた。

 

「ほら、言ったろ。あとちょっと遅かったら、あの絶景は見れていなかった」

 

何が言ったろ? なのかよく分からなかったが、その直後、空は真っ暗になり、大粒の雨が、天災のように容赦なく降ってきた。

 

私たちは転がるように、来た道を引き返した。

 

 

 

 

途中、広末くんが立ち止まり、先程私達がいた場所に向かってレンズを向けた。

 

「こんな雨の中で、カメラ大丈夫?」

 

「ちょっとやそっとじゃ、壊れないよ多分。でも、これは撮っておいた方がいい気がするんだ」

 

先に言ってて、と言われ、私と砂吹は屋根のあるところまで走った。

 

そして、あとで見たその写真を見て、私はリトアニアの光と闇という、題材を思いついたのだった。

 

 

 

 

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次回、第21話。半日観光で、トラカイへ。 

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