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蝉フィクション

旅行が好きなヘアメイク。カメラN750。物語のあるヘアショー。そしてクローン病。

何故あの人は空の写真をアップするのだろうか。

 

 

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上の写真をご覧ください。

いかにも、どこかのフリーサイトから落としてきたような写真ですね。

 

何故、人は空の写真をアップするのだろうか。

結論からいきましょう。

 

その空の写真が、その人にとって、何か特別なものだったからです。

 

当たり前なこと言うなって?

そう、たしかに当たり前かもしれません。

これは、“みんなが思っているよりも特別なもの”  というお話。

まず、この写真をご覧ください。

 

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これは、今年僕が撮った中でも、2番目くらいに思い入れのある写真です。

でも普通に見たら、電柱や電線はごちゃごちゃ写っているし、下半分は黒く潰れているし、構図もイマイチですよね。

 では、何故この写真が僕にとって大切だったのか。

 

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僕の今年のコンセプトは、「人知れず頑張る」でした。

人知れず、というのは、僕はいわゆる、言いたがりの人間なのです。

目標を設定したら公言したい、進捗は誰かに報告したい。

そんな鬱陶しいタイプの人間だったのです。

 

しかし今年は、静かに頑張ってみよう、と思うきっかけがあり、

気が付けばSNSから遠ざかった一年でした。

 

年始にいくつか掲げた目標の中のひとつに、

マラソン大会に出場してサブ4を達成し、とある人に会いに行く

というものがありました。

 

言いたがりだった僕が、練習成果などをいちいちSNSにアップしなかったところが、今までとは大きくちがいます。

 

さて、とある梅雨明けの近い、初夏のことでした。

この時の僕は、LSDという長い距離を同じペースでゆっくり走る練習を重ね、脚ができてきた頃でした。

次の段階である、心肺機能を高めるために、ビルドアップ走をしていた時のことです。

 

ビルドアップ走とは、1kmをあらかじめ決めたペースで走り、徐々にそのペースを早くしていくものです。この頃は、8kmを5分40秒から4分40秒までペースアップさせてやっていました。

 

1km  5m40s

2km  5m40s

3km  5m30s

4km  5m20s

5km  5m10s

6km  5s00s

7km  4s50s

8km  4m40s

 

数字だと伝わりにくいんですが、これが本当にツライ練習で。

最後の1,2kmは、このまま死ぬんじゃないかと思うほど息が乱れます。

そんな最後の1kmを知らせるアラームが鳴った時、僕の目に入ってきたのは、スローモーションのおばあさんでした。

 

おばあさんが、動いてるのか動いていないのか、もう判別がつかないくらいの速さで、ゴミ袋を持って、二段の段差を下りているところでした。玄関から外、外から道路への、たった2つの段差です。

 

本当に自分の体が限界を越えてしまって、辺りの景色がゆっくりになっているのかとも思いましたが、おばあさんは確かにそこに存在していて、ゆっくり、ゆっくり、ゴミを出そうとしていました。

 

僕は走るのをやめませんでした。

なぜなら、ビルドアップ走は、最後に全力で走ることに最大の意味があるからです。これを言っていたのは、Qちゃんを金メダルに導いた小出監督です。

この死にそうにツライ1kmの先に、今まで走った7kmの意味があるからです。追い込めないのであれば、ビルドアップは何の練習にもならないのです。

 

おばあさんを通り過ぎて、30mくらいして突然、「ま明日も走ればいいか」という気になって引き返したのは、良心でもなんでもなくて、ただツラくて、止まれる口実があればよかったんだと思います。

 

でも、本当に止まって良かったと思ったのは、次の瞬間でした。

「ゴミ、出しますよ、通り道なんで」とゼェゼェ言ってる僕に

両手を合わせて「ありがとう、ありがとう、本当に助かります、お世話様」

って、おばあさんが何度も何度も言うんですよ。

 

僕はここで、ああ、こんなおばあさんの前を通り過ぎようとしていたなんて、と初めて思いました。

 

たまにはヘタレも役に立つ。

 

僕はフラフラしながら、何とかこの瞬間、今の気持ちを、未来の僕が忘れないように、と撮ったのが、あの適当な構図の、空の写真なわけです。

 

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話は本題に戻ります。

もし僕があの写真をアップしても、いいね!の数は知れています。

こんなもんわざわざ載せんな、と不快に思われる方もいることでしょう。

いいね!とは思ってくれなくてもいいんです。

 

でも、いい事があったんです。

 

SNSを閲覧するにあたり、今必要なのは、よかったね、という気持ちなのではないでしょうか。

 

近年ではSNS離れが顕著になっており、その理由が、あまりにも悲しい。

リア充は勝手にやれ、婚テロされた、などという話をよく聞きますが、よほど過剰な人を除いて、

みな何かしらの思い入れがあって投稿しているのは、たしかなことなのです。

 

なんの変哲もない空の写真だけど、きっと特別な空なんだろうなあ、よかったね。

ただの自撮りだけど、きっと髪を切ってもらって、嬉しかったんだろうな、よかったね。

お付き合いしてたの知らなかったけれど、結婚したんだね、よかったね。

 

僕がひとつ確信していることは、世の中のFacebookを上手に使ってる人は、この「よかったね」という気持ちが前提である人たちなのだと思うんです。

 

僕は文章を書くのが好きなので、来年からまたSNSを再開させようと思いますが、あまり大きな声で物は言わず、人の投稿にはよかったね、という気持ちで接していけたらいいな、と思います。

 

だってSNSを通じて、普段なかなか会えない人たちが笑顔でいる様子に出会えることは、この上なく嬉しいことだから。

 

 

 

私事の結果をご報告しますと、持病のクローン病が暴れてしまい、11月に出場予定だった富士山マラソンには出場できませんでした。しかし、ここで腐らず、僕が会いたかった人生の大先輩には、予定通り、マラソンをサブ4で走り切ってから会いに行こうと思います。

 

もひとつ言うと、トップのいかにもな空の写真も、僕が撮ったお気に入りなんです。

アメリカとカナダの国境近くです。

ただ見た目よりも、物語がある方が、その人にとってよく見えることもある。

そんなお話でした。

 

長文お付き合い頂き、ありがとうございました。